ファーバーカステルの初代パーフェクトペンシルを再現

ファーバーカステルのパーフェクトペンシルには伯爵コレクションと呼ばれるモデルが存在する。鉛筆でない金属部分の重さが33gという、とんでもない代物だ。見た目だけでなくて、本当に重いのだ。

しかし世の中には趣味人が多く、この伯爵コレクションは鉛筆好きには有名だ。鉛筆も標準的な六角形鉛筆ではなくて、一回り大きな丸軸鉛筆が採用されている。しかしご覧の通り、ぼくは子供が使い残した三菱鉛筆ハイユニを使っている。

伯爵コレクションに三菱ハイユニを装着するだけならば、けっこう当たり前の話だ。人間というのは不思議な生き物で、数万円もする伯爵コレクションを購入したのに、鉛筆代を節約しようとする傾向がある。(鉛筆一本で千円を越えるので、たしかに仕方ないかもしれない)

ちなみに冒頭画像に登場している僕のパーフェクトペンシル伯爵コレクションは、数千円で “訳あり入手” できた中古品だ。本当はスターリングシルバー版が欲しかったけれども、僕に許された予算で購入できるスターリングシルバー版は販売されていなかった。こちらはプラチナコーディングと呼ばれるタイプだ。

プラチナがメッキされている。10年以上も毎日持ち歩いて使い込んだ人の話だと、メッキが剥がれてしまうこともあるらしい。

ただしスターリングシルバーではないからといって、別に残念じゃない。何しろ僕は金属アレルギー体質らしく、銀純度92.5%のスターリングシルバーだと、急に使えなくなってしまう危険がある。過去にルノア製メガネで問題となったことがあって、メガネ屋さんにリンドバーグのシリコンチューブを加工し、金属部分を肌に触れないように工夫して頂いた経験がある。

それに… 今回は「初代パーフェクトペンシル伯爵コレクションの再現」というように、実は入手した時の状態では利用していない。”闇の文具王” として、一体なにをやってしまったのかを紹介するのが、本エントリー記事のテーマなのである。

そのためには、まず初代パーフェクトペンシル伯爵コレクションを紹介するのが良いだろう。こちらの記事で紹介されている。「趣味の文具箱」の清水編集長が所有なさっている。何でも1994年の発売開始で、鉛筆削りを内蔵していないとの話だ。

実をいうと、別に僕も最初から初代パーフェクトペンシルを再現しようと考えていた訳ではない。単にパーフェクトペンシルの重要バランスを我慢することが出来ず、少しでも改善してみたいと思ったのがキッカケだ。

何しろ一目見れば分かるように、鉛筆の後端に33gもあるパーフェクトペンシルが装着されると、恐ろしく重心が後ろ側になってしまう。だから鉛筆が相当短くならないと、装着できない。もしくは習字の筆と同じように、鉛筆を垂直近くまで立てて筆記する必要がある。

ファーバーカステルの伯爵コレクションというのはボールペン軸でもデザイン優先で、実用性はどこかに置き忘れている。このパーフェクトペンシル版に関しては、さらに徹底している。

おまけに実用性は、先に紹介したパーフェクトペンシル9000番と同じだ。いざ使う時には鉛筆を取り外して、反対向きに回転させてから再装着するのが本当に面倒くさい。そしてこの作業を、使用前と使用後に何度も繰り返す必要がある。

そこで思いついたのが、「パンが食べれないのだったら、お菓子を食べれば良いじゃない」というフランス革命時代の有名セリフじゃなくて、「鉛筆キャップを使って装着したままにすれば良いじゃない」という正統的アプローチだ。

ただし画像でお分かりのように、この方法はパーフェクトペンシル伯爵コレクションには通用しない。パーフェクトペンシル9000番だと、プラスチック製なので重量バランスは大して変わらない。しかし何しろ伯爵コレクションは33gだ。 “本当に短くなった鉛筆” でしか使うことが出来ないのだ…

それって、本当だろうか?

たしかに伯爵コレクションをレビューしている人たちは、誰もが「いちびった鉛筆しか使えない」と言っている。しかしそれは、パーフェクトペンシルの基本構造が邪魔しているに過ぎない。

つまり現在の伯爵コレクションは鉛筆削りを内蔵しており、長い鉛筆を収納する余裕がないのだ。そしてさらに鉛筆削りに鉛筆がぶつからないように、内部には「鉛筆止め」のリングが存在している。

そこで「リングが邪魔にならなければ、長い鉛筆でも収納できる余裕ができるじゃない」である。三菱鉛筆ハイユニはファーバーカステルの伯爵コレクション用鉛筆よりは細いけれども、やっぱり少しだけリングが邪魔になっている。

今こそ “闇の文具王” の神器、ダイヤモンドヤスリの出番だ。このヤスリでリング部分を削ってやれば、パーフェクトペンシル全体に鉛筆を収納できるようになる。

かつてクロスのボールペンの先端口を、細軸のダイヤモンドヤスリで拡張することによって、三菱ジェットストリーム替芯0.28mmを利用可能にした。今回は中軸のヤスリの最も膨らんだ部分で、リング部分を少しずつ削る作業を実施した。ものの30分とかからずに、必要サイズまで拡張する作業が完了した。

これが作業完了後のパーフェクトペンシル伯爵コレクションである。初代伯爵と同じく、パーフェクトペンシル全体に鉛筆を収納することが可能になっている。ペンシルの後ろから、三菱ハイユニの後端が見えるのが分かるだろうか。

もちろん本来の伯爵コレクション向け太軸鉛筆も、同じように目一杯まで収納することが可能だ。(ただし細身の三菱鉛筆ハイユニ向けに調整したので、少し窮屈ではある)

いかがだろうか。

さすがに未使用の17.4cm鉛筆では無理があるけれども、わが子が使い残した三菱鉛筆ハイユニだったらば、十分に使いやすい。ちなみに “ほぼ日手帳” で有名なコピーライターの糸井重里さんも、昔はマイスターシュテュックよりも短いモデルのシャープペンシル利用者だったとのことだ。

(0.9mmで2Bの短めのモデルと言うことでボエムを連想するけれども、どうも別なモデルらしい)

ともかく魔改造後は実にしっくりした感じで、33gという重さも心地良さを増してくれる。実用性もバッチリだ。さらに追加で一本欲しいくらいだ。

そんな訳で、期せずしてファーバーカステル初代伯爵コレクションを再現してしまったという訳だ。これに勝るアイディアメモを書き留める筆記具を、僕はまだ見たことがない。

(いずれ機会があったら “趣味の文具箱” の清水編集長にお会いし、本物の初代伯爵コレクションを拝見させて頂けると… いやいや、多分そのような機会はないだろう。何しろ僕は正統派の方々からは、「招かれざる客」なのだから)

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静