[湘南日記] パスモのチャージに券売機が必要ないと分かり、駅員さんに深くお詫びする父ちゃん

某月某日、駅の自動改札機で引っかかった。パスモに残った残高では、電車賃を払い切ることが出来なったのだ。

カッコ悪い… カッコ悪いです。
それに後ろに待つ人にはご迷惑をおかけするし、非常に悔しかったりもする。
おのれ改札を通した鉄道会社… に罪はない。駅構内へ入る時には、僕がどこへ行くのかなど分からない。
「パスモの残高、大丈夫ですか。マスター?」など、最近流行りのAIアドバイス機能なども役に立たない。
(そういや冒頭画像はマスターカード… ああ、親父ギャグしか思いつかない)

この悔しさに輪をかけたのが、パスモの精算機だ。僕はスマホにパスモのアプリをインストールしているので、カード型パスモしか受け付けない精算機ではお手上げなのだ。
もちろん駅入り口の券売機であれば、スマホのパスモであってもチャージすることが出来る。しかしわずか数メートルが、今は遥か彼方のように遠く感じられる。
電車賃を払わない限り、券売機までたどり着けないのよー

で、結局は駅員さんに「すいません、パスモのアプリなので精算機でチャージできません! どーしたら良いでしょうか!」と泣きついて、手動でパスモに2,000円ほどチャージして頂いた。
多忙を極める彼の仕事を増やしてしまった訳で、まったくもってして申し訳ない次第だ。それでも親切に対応してくれた彼には、感謝するしかない。

それにしても改札口の駅員というのは、地味だけれども大切な存在だ。いくら自動改札機が人工知能を取り入れたとしても、生身の駅員は決して外せないだろう。
それにエンジニアが言うのも何だけれども、機械というのは融通が利かなくて困る。
完全機械化… あまり素敵な響きではない。

それに僕は子供の頃、駅員さんに助けられたことある。
あれは小学校四年生の頃だったと思う。
数駅離れたところにある塾へ強制的に行くように指示され、いやいや通っていた時の話だ。帰りの電車に乗ろうとして、お金が不足していることに気付いた時がある。

まったくもってしてヤル気の出ない塾であり、出口を出た時にはストレス満載だった。
それで江戸川乱歩の少年探偵シリーズの「青銅の魔人」という本を買って、電車の中で読みながら帰ろうとしたのだ。

とくに算数は苦手ではなかったけれども、この時はストレスのせいか電車賃のことを考えていなかった。駅の券売機を前にした時、はじめて事の次第に気がついた。
僕はため息をついて空を眺めるしかなかった。
少年探偵よろしく、父ちゃん大ピンチである。

数駅も離れたところなので、知り合いなどいない。
自宅に電話をかけても、母親は忙しくて電話口に出ることはできないだろう。そもそも、電話したらば残金がどんどん減っていってしまう。
困ったー、困ったー

で、結局どうしたかというと、残金で途中までの切符は変えたので、とりあえず全てを券売機へ入れて切符を購入した。
そして帰宅することが目的であるから、自宅の最寄り駅まで移動した。
もちろん「青銅の魔人」など、読んでいるような余裕はない。少年探偵よりも遥かにドキドキしている状態である。
(前述の通り小学校四年生だったし、徒歩で帰宅するのは無理だった。自宅までの道を知らなかったし、知っている今でも子供には遠過ぎると思う)

そして改札口で、切符を裏側にして駅員さんの目をごまかそうとした。その時の父ちゃんは、悪いことだと知っていても、それに賭けるしか無かったのだ。
その時の駅員さんはプロで、そんな小学校四年生の姑息な反則技などお見通しで、淡々と「電車賃、足りないよ」と言われてしまった。
父ちゃん、万事休すである。
人間、悪いことはするもんじゃない。

で、正直に事情を説明した。
そして駅員さんは、そんな父ちゃんのことを淡々とした様子で眺めながら、「行っていいよ、立て替えておくから。これからは正直に言いな」と言ってくれた。
どうみても他の駅員さんがチェックしたら、電車賃不足の切符であることは明らかだ。
駅員室に待たせて親に来て貰うと、父ちゃんとしては親から大目玉を食らってしまう。駅員さんは知らないだろうけど、たぶん家にはしばらく入れて貰えないだろう。恐ろしくスパルタな家庭環境だった。

悪いことをすると屋外へ放り出される。
イヤなのに塾へ行かされる。
あの頃は子供に人権など無かったなあ。夜中に屋外へ放り出されて泣いている時など、近所の人が堪らずに拙宅へ説得電話してくれていたらしい…

それはともかく、駅員さんの神対応には感謝するばかりである。
彼の指導のおかげで、父ちゃんは少しだけ正直さが増して、人生に投げやりになる態度が少しだけ減少した。
それから、AをしたらBになり、BとなったらCとなる… と、これから生じる展開を予想することも出来るようになった。
父ちゃんが少しでも真人間っぽく見えたら、それはあの時の駅員さんのおかげである。それからの父ちゃんは、いつも帰りの電車賃を漏らさず計算して買い物するようになった。その駅員さんには、いつも電車賃の印刷された面を見せて渡すようになった。
彼は多くを語らずして、多くのことを父ちゃんに教えてくれたのだ。

そんな訳で父ちゃんにとって、今でも駅員さんというのは特別な存在なのだ。
その駅員さんの手を、久ぶりに煩わさせてしまった。
反省すること、しきりである。

で、つらつらと数日過ごしているうちに、ふと何気に試してみて驚くべき発見をした。なんと父ちゃん、精算機がなくてもパスモにチャージできたのである。
それが冒頭画像に登場するAu Payである。
ウォレットにパスモとAu Payを登録し、パスモのアプリでチャージを選択すると、ウォレットに登録されたAu Payでチャージすることが出来るのだ!
(考えてみればパスモにはオートチャージを設定できるのだから、そういうことも出来るのだろう)

いやはや、全くもってして面目ない限りである。
電車賃不足の時に駅員さんに正直に相談するのは良かったけれども、もう少し冷静さを保てていれば、もしかしたら自己解決できていたかもしれない。
今になって気づけたのであれば、あの時に必死かつ冷静に思考していれば…

こうして父ちゃんは、また一つだけ新しいことを学んだ。
今回の駅員さんにはお詫びと感謝していたけれども、またさらに感謝度がアップした。少し違うかもしれないけれども、「ピンチの中にチャンスあり!」とも言えるかもしれない。

ところでAu Payも役にたつけれども、こちらはどうも商売熱心なのには呆れさせられる。

Au Payのおかげで助かっているのは確かなんだけれども、もう少し控えめになることは出来ないかなあ。
しっかり使わせて貰っているんだし。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静