[湘南日記] ダースベイダーのボールペンは、Cross最高峰のピアレス125
Star Warsが上映された1977年を記念したダースベイダーのボールペンは、1977本の限定生産品だ。Crossの最高峰にランクされているピアレス125をベースに、塗装などが特殊化されている。
お値段は… 2022年12月3日時点で税込み60,500円(税抜き55,000円)だった。ちなみに同じピアレス125も税込み60,500円であり、他のタウンゼント版Star Warsシリーズも同一価格に設定されている。
その点では、特に突出しているとは言えない。
しかし突出していなくても、超高級に位置付けても構わない高級ボールペンには相違ない。
もちろん僕でさえ、最初は驚くだけだった。
「ピアレス125に興味があるならば、中古品をオークションサイトで探せば良いんじゃないか」と、わずかな良心も僕に話しかけて来た。
それで存在を知ったものの、「へー、すごいなあ」という感心だけで終わっていたという訳だ。
ちなみにダースベイダーというのは、Star Wars初期主人公ルーク・スカイウォーカーの父親である。彼も最初は、正義感に燃える若者だった。
だが家族が亡くなる未来を視てしまい、それを何とか止めたいと思い、そこからダークサイドの誘いにはまってしまった。そして師であるオビワンに打ちのめされて、サイボーグ化して生命を繋ぐことになった。
サイボーグ化した彼は生命維持装置に頼る必要があり、あの黒いヘルメットやマスクを常時着用するようになった訳である。
生まれついての悪人ではない。
さてそれではどうして僕もダークサイドに堕ちてしまったかというと、発端は体調不良にある。ボールペンを支える中指の爪付近で、何やら痛みのようなものが生じるようになってしまった。
ペンだこではない。
もともと爪のあたりは弱くて、過去には爪の隙間に入ったばい菌により、爪の付け根が膿んでしまったこともある。
「ひょうそう」というヤツだ。
あの頃はまだアナキン・スカイウォーカーのような若者だった僕は、彼の彼女であるパドラみたいな美女にバンドエイドを貰ったこともある。痛くてたまらないので給湯室で手を洗っていたのだけれども、その様子を見られてしまったらしい。
声をかけられて振り返った時に、そっと差し出されたバンドエイドが懐かしい。
(甘酸っぱい想い出ですな)
ともかくそれ以来はずっと手洗いに気をつけていたけども、体調の良くない時はどうしようもない。というか、加齢によって衰えた体で、無理をしたのが良くなかったらしい。
文具ライターとして数多のボールペンをコレクションしていたけれども、結局はクロスのタウンゼントというボールペンに、バンドエイドを巻いて使うようになった。
(爪側にバンドエイドを巻くと、昨今のご時世で何度も手洗いをする度に交換するのがめんどくさかったのだ)
ちょっと脇から見られる、珍妙な光景になってしまう。
自分でも、「俺、何やっているんだ?」である。おまけにキャップ式ボールペンだから、持ち歩くことも出来なくなってしまう。
で、いろいろと試しているうちに、久しぶりにクロスのエックスというボールペンを購入することになった。これは数千円のボールペンだけれども、工夫したら神ボールペンとなった。
それで気に入って持ち歩いていたら、ある時に大失敗をしてしまった。
分譲マンションでは管理組合というものがある。その年次総会に参加した時に、ペン先を出したままYシャツの胸ポケットに投げ込んでしまったのだ。
何しろ総会だから、基本的に全戸参加だ。数年前まで理事長をやっていたし、総会後は挨拶などで忙しい。
だからついつい無意識のうちに、ペン先を出したまま投げ込んでしまったらしい。
しかし…
実はボールペン軸の両端を持ってペン先を出し入れするエックスなので、キャップ式ボールペンではない。むしろ機構的にはキャップレス万年筆に近い。
つまりインクは水性インクでこそないものの、布地に染み込みやすいジェルインクだったのだ。
Yシャツはその一回でノックアウト判定である。
「どーするの、このシミ?」と、家族から言われてしまった。
で、その時に思い出したのが、ピアレス125のダースベイダー卿モデルだ。
もともとはエックスのハン・ソロから出発して、同じエックスでダースベイダー卿モデルが存在することを知った。それを安く購入できなかとネットを彷徨っているうちに、ピアレス125のダースベイダー卿モデルの存在を知った。
ちなみに良心は「オークションサイトで中古品を…」とささやいたけれども、それらにはクロスのロゴが大きく印字されていた。ピアレス125の125は、実はクロス創立125周年を意味している。どうもそういった理由から、僕には悪趣味と思えるほどに大きなロゴが印字されているらしい。
(ザッツ・アメリカ!だろうか。米国歴代大統領も署名用に使うボールペンだし)
で、ここら辺に来て、ダークサイドのささやきが強くなってきた。
「Yシャツをダメにするのはモッタイナイと思わないかい。選択してくれる家族に悪いとは思わないのかい」と、暗闇から老婆の声が聞こえるような気がする。
そうかと思えば、「父親が変てこりんなボールペンを使っていると、子供が恥ずかしい思いをするのではないかな。マンションの総会だったら前向きだから見られなかっただろうけど、会社の会議ではそうは行かないぞ」と、上の方からパルパティーンの幻聴が聞こえるような気がしてくる。
その合間には、「買っちゃえ、買っちゃえ」という悪友の声も… これは本当の声か?
あげくの果てには、「珍しいボールペンだから、話のネタになるんじゃないかい」という声も聞こえ始めた。
うーん、我ながら困ったものである。
そしてトドメはAmazonのブラックフライデーである。
限定1,977本に加えて、Amazonでは「残り一本」だった。そしてちょうど、お得に購入可能なブラック・フライデーである。
父ちゃん、「今だけがオトク!」というスーパー特売にも弱いのだ…
で、不覚にも意識を失ってしまった。
そして気づいたら、Amazonからの宅配便でインターフォンが鳴っていた。そうして僕は、ピアレス125のダースベイダー卿モデルを手にすることになったという訳だ。
「何でも他人のせいにしてはいけません」と育てられてけれども、なんか本当にダークサイドの力が働いたような気がしないでもない。いや、ここは本当にダークサイドに囚われてしまったということにしておこう。
そして予想通りというか、やはりクロスが誇る最高峰モデルだけあるというか、ダースベイダーは大活躍することになった。
(冒頭画像のように赤いシリコン輪ゴムを巻くと、米国人でなくて日本人でも最高峰の書き味となるのだ。えっ、どうして赤い輪ゴムなのかって? それはもちろんダースベイダーのライトセイバーが赤だから…)
そしてさらに楽天でもダースベイダーのボールペンが発見され、僕はさらなるダークサイドの深みへ囚われていくのだった。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野谷静