[湘南日記] ボールペンは重量で決まるものではないという話
今回はボールペンの使い心地は重量のみで決まるものではないという話。
ちなみに日記のプロット作成には、この42gもあるクロスのエックスというボールペンを使用した。我ながら説得力に欠けていますな。
なお鋭い方はお気づきのように、クロスのエックスはカタログによると39gとなっている。しかし上記の42gもウソじゃない。
購入理由
クロスのエックスを購入した理由は、先代モデルのエッジが廃盤になってしまったことから始まっている。
そうなのだ。
クロスのエックスは独特な操作方法だけれども、実は最初に採用したのはエッジなのだ。使う時には両端を持って引き延ばし、使い終わったら押し込んでペン先を収納する。
男の子が大好きな合体変形ロボットのように、エックスは変形するのだ。
ちなみに家人に手渡してみたけれども、見事に使うことができなかった。
「あなたが持っているボールペンみたいに、ねじってペン先を出すことは出来ないわね。ノック式でペン先を出す訳でもないみたいだし… どうやって使うのかしら?」
アレコレと二分くらい試していたけれども、お手上げだった。
単純に引き延ばすだけ… 「コロンブスの卵」である。
こういう特殊なボールペンだから、実は最初は購入するつもりは毛頭なかった。
そもそもクロスのエッジにしても、縮んだ時の形状で使いたいと思っている… いや、実際にそのまま使っている時が多い。その点でエックスは円筒形だから、短い状態のまま持つのは大変そうだ。
だから興味がなかったのだ。
しかし… 廃盤なので予備品を確保しようとして、ちょっと変わったクロスのエックスを見つけてしまった。それが冒頭画像のモデルだ。
スターウォーズのハリソン・フォード演じるハン・ソロがラッカー印刷されている。
そうなるとスターウォーズ好きの文具ライターとしては我慢できず、ついつい購入してしまった。
それから限定生産品の残り一本… 父ちゃんはそういった「希少品」というシチュエーションに弱いのである。
さすがは見るからに太軸のボールペンだ。三菱鉛筆ジェットストリームの4+1多色ボールペンよりも太い。
太いと長時間の使用には向かないけれども、その分だけ素人が精密なペン先コントロールをすることが出来る。そんなこともあって最近の文具店には、太軸の筆記具が多い。
クロスのエックスはその中でも群を抜いて太い。
しかしラッカー塗装のおかげで手に握った時のグリップが良好で、その太さも殆ど気にならない。エックスはクロスから入門者向けボールペンと位置付けられているけれども、良い意味で期待を裏切っている。
39g → 42gへ
さてこのスターウォーズのボールペンだけれども、そんなに中古品も多くない。
日本では稀にしかオークションサイトで出品されないので、わざわざeBayまで覗いてみた。しかし飛んでもなく高額な価格で取り引きされており、ちょっと簡単には手を出せなかった。
そこでスターウォーズモデルでは無い、「ノーマルなクロスのエックス」を購入した。
まずはそちらを使ってみようとして、一つ気付いたことがある。
重量バランスは悪くないけれども、重い高級ボールペンに特有の「重み」が感じられないのだ。クロスのエックスは39gなので、実際には「思い高級ボールペン」と大差はない。
どうやら巨大な上にバランスが取れているので、「重み」を感じられないらしい。
これでは確かに使いやすいけれども、四色ボールペンなどと大差なくなってしまう。そこでボールペン本体軸には手を出したくないので、替芯を工夫してみた。
ははは… これがその「工夫」だ。
ゼブラSARASAのJLV0.4替芯のプラスチック部分を可能な限り削ってしまい、その代わりに鉛シートを貼ってある。もちろん上側が加工前で、下側が加工後だ。
今では鉛を扱う職人さんも少なくなってしまった。何しろ鉛は取り扱い注意で、体への付着を避ける工夫をする必要がある。
そこら辺は漫画ゴルゴ13のためにメンテナンスや加工を請け負っていたデイブ・スミスが詳しい。
あのゴルゴ13もとうとうシリーズ終了… いや、ともかく、僕にとって筆記具は最重要の仕事道具だ。したがって完璧を期するゴルゴ13と同じく、少しでも筆記具に妥協することは許されない。
ともかく少し突き抜けた工夫をした替芯を装着することにより、ボールペンは39g –> 42gへと重量アップした。そして重心もボールペン本体軸の前方へ移動し、なんとなく高級感が感じられるようになって来た。
えっ?
「ここまでやっている時間を仕事に振り向けたら、もっと成果がアップしているだろうに」というのは禁句だ。
ちなみにこれだけが工夫したことではない。
実はノーマルなエックスはマット仕上げであり、口金部分もラッカー塗装ではなく金属メッキなのだ。これでは手に持った時に、つるつると滑って使いにくい。
そこでお菓子などのプラスチック包装を、両面テープでボールペン本体軸へ貼り付けてみた。
そしてさらにトドメとして、口金の金属部分に透明マニュキュアを塗ってみた。
ちょっと人前には出しにくいかもしれないが、こういった工夫によって使い勝手は改善した。
スターウォーズのハン・ソロモデルみたいに使いやすいクロスのエックスが出来上がった。もちろんノーマルなエックスは大量生産されており、お手軽な価格で購入できる。
だから限定生産品のハン・ソロみたいに気を使わなくて済む。
と、いう次第で、ようやく満足できるボールペンが完成した。
どんなに頑張っても重量がないと重みを感じられないけれども、それに加えてボールペンの重心位置や握りやすさとか、手に触れる面積が重量感を生み出すという訳だ。
単純に重量があれば済むという話ではないのである。
まとめ
以上の通りで「重いボールペン」というのは重量・重心・デザイン・塗装・インクといった諸々が影響して生まれる存在だと言える。冒頭のタイトル通り、ボールペンは重量だけで優劣が決まるようなアイテムではないのだ。
しかし… 我ながらよくまあ時間と費用を投入したものだと呆れてしまう。しかし小さな差が、大きな成果の違いを生み出すことも多い。勝負の世界は紙一重だったりする。
ともかくクロスのエックスというボールペンは、なかなか興味深い存在だと言える。それにまだまだ、手を加える余地は残っていそうだ。もう少し時間を取れたら、ぜひじっくりと分析やレビューしてみたい。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:小野谷静