【ネタバレあり】魔法科高校の劣等生の第31巻は、「終わりの始まり」
このご時世の中、無事に “魔法科高校の劣等生” の第31巻(未来編)が発売されました。
「別にもう興味ない」と宣言していた我が家のお嬢様は、到着した本を手に取ると同時に、ものすごい勢いで読み出しました。
(恐ろしいほどに予想通りです。図書館で購入依頼できない状況なので、購入して正解でした)
さて31巻は、ネタバレも何もなく、予め予告されていたことが実際に起こったという程度です。そういう意味では、ストーリーとしては主人公の言動と同じく、全く意外性がありません。
唯一意外だったのは、主人公の司波達也が万年筆を使っていたこと程度でしょうか。
この調子だと32巻は、”決着編” とでもなってしまいそうです。
それでは早速、どうしてそんなに意外性が無かったのかを紹介することにしましょう。
(別に内容が面白くなかった訳ではありません。九重八雲師匠が登場しなかったのが残念な程度です)
読者サービスはどこへ?
あ、「別に内容が面白くなかった訳ではありません」は事実ですけれども、挿絵は今一つなものがありました。109ページ目です。
別にお嬢様には読者サービスは必要ありませんし、私にも必要ありません。ヒツジ執事と名乗るだけあって、葉山執事(狐)の物腰を柔らかくしたような感じです。
もう若い子が描かれるだけで、それだけでオッケーです。しかし2019年ブックオフのラノベ人気ランキングで、男性票を多数獲得した本シリーズです。
読者サービスに手を抜いてはいけないでしょう。それだけを楽しみに購入する読者も存在するかもしれません。
裏表紙も四コマ漫画化しています。漫画ならば冒頭画像のように、キチンとした四コマ漫画が発刊されています。もう少し中二病的な男性読者が満足する絵の方が良いかと思います。
ただしさすが表紙は… オジサンには良く分かりませんけど、このくらいでオッケーでしょうか。
(でも我が家のお嬢様の方が可愛いと… いやいや、奥様の方が麗しいと言っておきましょう。キッパリと)
ただしこれ、佐伯さんと勘違いすることは無いけれども、藤林さんとは勘違いしてしまうかもしれませんね。
回収される伏線
さて残念な挿絵は32巻を期待するとして、31巻の内容に入りましょう。
本巻では、幾つかの予告が実現されています。
まずは “達也様のラスボス化” です。30巻で新しく身に付けたものは全くないですけど、いよいよ魔王化します。
24巻で説明のあった、”手を出せば禍が降りかかる、禍神のような恐ろしい超越者” です。ちなみに24巻では、彼自身も認識しています。
なにしろ「達也は最近になって、抑止力は必要悪ではないかと考えるようになっていた。」とこのことですから。だから悲壮感は全く無いし、ようやく伏線が回収されたという程度です。
これは「バトルだ、バトルだ」と、派手なシーンを好むお嬢様には良かったらしいです。何しろいよいよ戦略級魔法師ベゾブラゾフ博士との決着がつきます。
もはや敗北フラグの立っていたベゾブラゾフですけれども、それはもう気の毒になるほどです。何しろ予告通り、自分が編み出したチェイン・キャスト技術が再び利用されてしまいます。
彼がやられるとなると、エドワード・クラーク博士もやられてしまいます。なんかカッコ良い名前でしたけど、殆ど活躍せずにアッサリと敗北します。
と、いうか、”サスオニ” とも呼ばれる司波達也を前に、アッサリやられないのは八雲師匠くらいでしょうか。
それからこちらは司波兄妹は関係しませんけども、佐伯閣下の方も片づいてしまいます。こちらは四葉家が動きます。ホントに本家の方々は、敵に回したくはないものです。
もちろん司波達也も、絶対に敵には回したくないです。
双子の戦略級魔法師が登場しますけど、アッサリとやられるだけではありません。さっそく彼らの魔法を七草姉妹が応用できなかと分析します。知性派の主人公って、これだから恐いです。
まあ現実の世の中でも、情報と分析力を持つ人が最も恐いのが一般的です。そういう主人公に究極魔法を与えるのだから、さぞや著者は物語にメリハリを付けるのに苦労していることでしょう。
何しろ世界に一握りしか存在しない戦略級魔法師を片っ端から撃破し、その者たちと同等の存在を作り上げていくのだから始末に負えません。八雲師匠が24巻で、「彼に抗し得る若者ならば、世界に十指では収まらないでしょう」と東道閣下に説明した通りであることと分かって来ました。
別に主人公の司波達也に限らず、まさに東道閣下が「恐ろしい時代になったものだ」というところでしょうか。
これで残る伏線は著者が “魔法科高校の劣等生” 第30巻あとがきで語ったように、ラスボス的な位置付けになった九島光宣くらいでしょうか。
そういえば彼には、エドモンド・クラークの息子であるレイモンド・クラークが付いています。いつの間にかオマケ的なサブキャラになってしまいましたけど、少しは力になってくれるでしょう。
(って、ここまで語れるとは、いつの間にかお嬢様に影響されてしまったのか、お嬢様のヒツジ執事なのに随分と読み込んでしまったようです)
“魔法科高校の劣等生” で閉塞感?
さて”魔法科高校の劣等生” 第31巻ですが、最後は次のようなナレーションで終わります。
“彼が兵器であることを強要されない未来は、絶望的に、遠ざかった。”
“未来は、未だ、来たらず-。”
で、これは著者は『あとがき』で自分の未来観を1990年代初めから、「未だ、来ない。来る様子が無い。来るとは思えない。」と感じるようになったと語っています。閉塞感に悩まされているそうです。
これは “ソードアートオンライン” の著者さんとは対極的なように見えて興味深いです。
こちらは平凡な主人公が試練をくぐり抜けて成長していくっていう、少年ジャンプの王道マンガ的な内容です。”鬼滅の刃” や “Bleach” のように、“実は主人公は特別な生まれだった” という反則的な設定もありません。
話を戻すと、”魔法科高校の劣等生” の著者は、いったい何に閉塞感を感じているのか気になります。
何しろあなたはご存知ないかもしれないけれども、1990年代初めにインターネットが普及を始め、スターバックスのようなお店も登場しました。今日では当たり前のように存在するAmazonや楽天だって、この頃に誕生しました。
海外旅行も当たり前のようになりました。世界はどんどん繋がり、グローバル化というものが進んだのです。
だから現在のようにパンデミックが起こるようになった訳ですけど、英語さえ自由に使えれば、私たちにとって世界は広くなりました。パソコンだって個人が1台を所有できる価格まで安くなり、著者のようにネットデビューする小説家も登場しました。
だからこそ、いったいどうして「閉塞感」なのだろうかと不思議になる訳です。
“魔法科高校の劣等生” だと火星開拓を目指す “ディオーネ計画” が実現しそうにないですけど、そのあたりでしょうか。でも司波達也が自由になりたければ火星に行ってしまえば良い訳です。
それに現実世界でも、火星開拓計画が実際に進んでいます。遅いかもしれないけれども、民間企業が宇宙進出を頑張っています。
そういや “ソードアートオンライン” では、実際に惑星移住計画まで進んでいます。著者が閉塞感を感じるなら、舞台を宇宙に広げてしまって構わない訳です。
それに司波兄妹にしてもウィルスには弱いというか、無理にチューンナップしている魔法師の方が今回のウィルスに弱そうです。 そういう意味では、「生きているって、素晴らしい!」と喜びたくなる程です。
あ、小説の方から外れて来たので一つ補足しておくと、たしかに著者(ベゾブラゾフ博士?)は調査不足でミスを一つやっています。P50の「ジブラルタル」は米国領じゃありません。
実はこのようなご時世ということもあって “ジブラルタル金貨” を購入してみたのですが、裏面を見たら “女王陛下” でした。つまりジブラルタルって、グレートブリテンなんです。
イギリスには戦略級魔法師のウィリアム・マクロードさんがいます。そしてジブラルタルは欧州大陸とアフリカ大陸の接するところに位置します。そんなところにUSNAが基地を作って戦略級魔法師のローラン・バルトを配置しては国際問題でしょう。
まとめ
と、いう訳で、”魔法科高校の劣等生” 第31巻で、最終巻がハッキリと見えて来ました。「終わりの始まり」です。
それにしも痛快というか、一気に片づけてしまいましたね。「全部まとめて一撃で粉砕」とまでは予想していませんでした。
ちょっと感情移入しにくい主人公ですけど、されたらば本人も迷惑することでしょう。引き続き無双してくれることを期待したいです。
あとP249の戦闘服はカッコ良かったです。イラストライターさんも挿絵が多くて大変だとは思いますが、ラノベでは絵も重要です。ぜひ第32巻では、もっと丁寧に描かれた読者サービスを期待したいです。
(ちょっと描かれている人物たちが気の毒です。もしかしてアシスタントが何かのテストの一環として描いた?)
ともかく内容はいつも通りで、安定感があって一気に楽しんで読める一冊でした。
(お嬢様は前半を一気に読み飛ばしていましたけど、まあ政治的な駆け引きというのは、子供には少し面白くない部分かもしれませんね)
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:四葉静