[魔法科高校の劣等生] アンジェリーナ・クドウ・シールズの正体
「魔法科高校の劣等生」が完結し、「続・魔法科高校の劣等生」メイジアン・カンパニーの第一巻が発売されています。
司波達也と司波深雪が健在なのはモチロンですが、さりげなくレギュラーの座を勝ち取ったのが、リーナこと “アンジェリーナ・クドウ・シールズ” です。
物語の中では、司波深雪と同率1位を誇る金髪碧眼の美少女という設定です。レギュラー化を喜ばない男性ファンは多くないでしょう。(そして裏表のないストレートで頼もしい性格は、女性ファンも多いかと思います)
ところで私のようなオジサンから見ても好感度の高い彼女ですが、同時に父親的な立場から心配な点があります。それが彼女の正体なのですが、今回はそこら辺を語らせて頂くことにします。
分かりやすい子
USNAのスターズ総隊長である彼女は、アンジー・シリウスというコードネームが与えられています。十三使徒の一人で、戦略級魔法師です。階級は少佐で、USNA最強の実力を持つとのことです。
「続・魔法科高校の劣等生」メイジアン・カンパニーでは、司波深雪と共に魔法大学の学生となっています。絶世の美女で、物語の中では司波深雪と双璧を成します。
裏表のないストレートな性格で、料理や細かいことは苦手です。いやいや、大雑把な性格で、戦闘には向いていると言えるでしょうか。
何を考えているのか、実に分かりやすい子です。そのために我が家のお嬢様も、何の疑問も抱いていません。
ただし….. 注意深く読んでみると、実は謎だらけになって来ます。
謎だらけの背景
まず不思議なのは、親兄弟や親戚関係です。「九島烈の弟の孫」とのことですけど、彼女以外は誰も登場しません。
出生地や出身地も説明されていません。住まい(軍の宿舎)の説明はありますが、実家に関する説明は全くありません。
もともと戦略級魔法師として特別な生活を送っていたとのことですけど、幼少時に教育を受けた場所の説明もありません。軍関係以外では、友人は誰も登場しません。
たしかに大統領のお茶会に招待されるような人物ではあるけれども、普通はそれなりに交友関係があるでしょう。そういう部分の描写が全く無いのです。
まるで、ある日突然に世界へやって来たようなイメージです。さすがに「魔法科高校の劣等生」でも、ここまで背景を省かれている人物は存在しません。
大亜連合の戦略級魔法師の子だって、いちおう教育担当者のような人が存在します。家族のように、相当長い付き合いだと描かれています。
謎だらけの性格
次に不思議なのは、性格です。
魔法師が招集された先頭集団スターズの総隊長という立場にも関わらず、実に天真爛漫です。アニメで戦った司波達也にも、「君は今すぐ軍を辞めた方が良い」と宣言されています。
頭の回転は悪くありません。状況判断も的確です。いざとなれば引き金を引くことも辞しません。
しかし….. USNAでNO.1の実力に自信こそ持っているものの、それを積極的に行使することはしません。性格が好戦的ではないのです。
総隊長として部隊を統率するためには、冷徹な計算と実行が必要が必要です。しかし彼女は、冷徹になりきれません。性格が優しすぎるのです。
これは彼女の過去の境遇や、スターズでの立場を考えると奇跡的ではないでしょうか。読者として読むと好ましいですし、もしも上司が彼女だったら、オジサンだって素直に従います。
しかし世の中には、いろいろな人がいます。物語の中でも、彼女のことを好ましく思わない部下たちも存在します。そういう者たちと接して来たハズなのに、それでも素直で明るい性格です。
なんだか少し、出来過ぎているような気がしないでもないです。
謎の類似性
実は「魔法科高校の劣等生」では、彼女と似たような人物が存在します。それが先代シリウスを葬った、新ソ連が誇るイーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフ博士です。彼も十三使徒の一人で、戦略級魔法師です。
彼も親兄弟は存在しません。彼は人工授精により誕生した人間です。遺伝子操作は行わず、無数の受精卵を作り出し、その中から選ばれた最高の成功例なのだそうです。
ただし私から見ると、彼の魔法力はリーナや司波達也には及びません。
戦略級魔法「トゥマーン・ボンバ」は、水を酸素と水素に分解し点火する魔法式に過ぎません。それを発動時点と座標を変化させながら自動複製します。連鎖的に展開し、さらに遅延発動させることによって、構築した全魔法式を同時に作動させることによって、広範囲の攻撃を可能とする魔法なのです。
だから彼のトゥマーン・ボンバは、十文字克人であれば防御することが可能です。と、いうか、司波深雪のガーディアンとなった桜井水波に防がれています。これが「最高の成功例」です。
いや、そういえば、もう一人だけ似たような人物が存在します。それが先ほどから何度も双璧を成すと説明している司波深雪です。容姿や魔法力は互角だと言えそうです。
ところで彼女は伯母の四葉真夜の説明によると、遺伝子操作を徹底的に施された調整体魔法師なのだそうです。だから父親や母親はハッキリとしていますけど、屈指の美貌と魔法力を誇る訳です。
もちろん魔法師という存在自体が、基本的に遺伝子操作の産物だという設定になっています。そう考えると、彼女が九島烈の弟の孫であることは疑いないでしょうけれども、出自が何となく気になって来ます。
謎の特別待遇
そして彼女は冒頭で説明したように、現在は日本で司波深雪のボディガードをしています。USNAが彼女を日本へ無期限貸与した体裁になっています。
USNAでパラサイト事件や政争に巻き込まれないように配慮されたという理由らしいですが、それにしても相当気前の良い話です。たしかにUSNAはジブラルタル基地などにも戦略級魔法師を配置してしますけど、下手すると世界一の実力を誇る魔法師です。実に破格の特別待遇です。
ただしこれ、彼女が一人だけだと想定した場合です。
人工授精って、普通は卵子一つだけを授精させる訳ではありません。沢山の精子に、複数の卵子を授精させます。そして授精した中で、最も好ましい卵子を一つだけ選択します。
つまり一か八かの賭けではなく、幕末のガトリング砲とかマシンガンのように乱れ打ちする訳です。作業効率という点からは、そのような流れとなります。
だとすると… 彼女には兄弟や姉妹がいる可能性は、十分に存在します。ただし全員をスターズに集めても効率的ではないので、別な場所で生活している可能性がありそうです。
だとすると、彼女がいなくなっても代わりは存在する訳です。現在のスターズ総隊長はカノープス(総隊長になるとシリウスのコードネームに変わる)さんであり、それは維持されているでしょう。
しかし彼が窮地に陥った時には、彼以上の戦略級魔法師が登場する可能性がありそうです。そういったケースを考えた時、USNAとの関係はさておき、スターズとリーナの関係はリセットしておいた方が良さそうです。
こうやって考えると、全てのつじつまが合って来ます。作者の佐島勤氏は、このような緻密で正確な設定が得意です。
つまり何となくですけど、彼女は特別な生まれと、特別な育ち方をしているような気がする訳です。
そしてUSNAが九島烈の弟から入手した技術で “パレード” (仮想行列) を生み出した訳で、九重八雲先生が伝授されている古式魔法がUSNAに取り込まれているということです。
だから九重八雲先生が、九島光宣にUSNAに魔法技術を供与しないように念押ししたと考えると、実につじつまがピッタリと合いそうです。
ここら辺が予想通りだと、オジサンとしては父親的心境でリーナのことが心配になって来る訳です。
まとめ
「魔法科高校の劣等生」も「続・魔法科高校の劣等生」メイジアン・カンパニーも、架空の物語に過ぎません。作者の佐島勤氏によると、SFジュブナイル小説です。
しかし現実の世の中を見ると、なんだか魔法科高校の劣等生以上の事態が、あちこちで生じているような気配もします。そういった訳で、このくらいの裏設定は大いにありそうに感じる次第です。
ただし安心できるのは、彼女は上手に踊らされているにせよ、無理やり強制はされていないということです。私たちだって、結局のところは自然現象の連鎖反応によって感情を持っている訳に過ぎません。
つまり人間である限り、「自発的な意思」というのは存在するとも、全く存在しないとも言える訳です。その点で司波達也の庇護下にあるリーナは、自由な存在であると言えます。
あとはどこまで彼女が自分の人生を謳歌できるかでしょうか。ぜひ佐島勤氏の第二巻を楽しみに待ちたいところです。
それでは今回は、この辺で。ではまた。
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記事作成:よつばせい