日常使いで10年経過したクロス”アポジー”油性ボールペンの使い勝手

ビジネスマンにとって筆記具は必須アイテムです。

訳あって10年以上は日常使いで利用されたという、年季の入ったクロス・アポジー油性ボールペンを譲られました。

洗練されたデザインではあるものの、実用性に重点を置いたクロスのトップ・ブランド製品です。

(ちなみに冒頭画像の黒いボールペンがアポジーで、青い方はアベンチュラです)

アポジーは特徴的なボールペンです。そこに惚れ込んで、3本連続してアポジーを使い続けている人もいます。

なんでも1本目は紛失し、2本目はクリップが折れたのだそうです。(クロスの永久保証は回転機構といった構造部分に限定されるので、クリップの無償修理はNGなのです)

今回は、使い込まれたクロスのアポジー油性ボールペンを紹介させて頂くことにします。

クロスのアポジー油性ボールペン

クロスというと、細身のクラシックセンチュリーが有名です。1990年代までは殆どセンチュリー・シリーズ(ボールペンとペンシル)だけで商売して来たので、当然と言えるかもしれません。

そんなクロスは1993年にタウンゼントを商品化し、2000年には一気にラインナップを拡充させました。私はATXを2000年前半に購入していますが、ちょうど登場したばかりだったようです。

あの頃はクロスのインクに不満を感じてモンブラン(油性ボールペン)へ移行しましたが、今にして思えば納得できます。会社を立て直している頃だったのですね。

アポジーもATXと同時期に登場しました。アポジーはトップ・ブランドだけあって、ATXの数倍の販売価格です。

本当に、いきなり勢いに任せてアポジーを購入するような真似をしなくて良かったです。

なおアポジーはATXやアベンチュラと同じく、クロスでは “巨人族” に属します。全長144mmで、軸径14mmです。

おまけに私の手元にあるブラックラッカーのアポジーは、重量36gです。ATXが重量28gです。手に持っただけで、違いが分かります。

デザインはクロスにしては珍しく、本体軸とキャップの接続部分に、腹巻のようなアクセント(金属帯)が存在します。クリップもバネで可動するようになっており、クロスにしては前衛的です。

なお重心はタウンゼントと同様、相当後ろ寄りに設定されています。大柄な男性には理想的かもしれませんが、私には少し大き過ぎるようです。

いやいや、ボールペンを紙面に垂直近くまで立てると良いのかもしれません。しかし私は鉛筆や万年筆に慣れているため、寝かせ気味にすることを好みます。

アポジーのようなサイズ・重量・重心のボールペンは稀です。「アポジー3本目」さんにとってはベストかもしれませんけど、あまり私には向いていないようです。

(まだ全長141mm&軸径12mmであるウォーターマン・カレン(42g)の方が、重心バランス的には良いかと思います)

10選手の劣化状況

お次はクロスがどこまで筆記具に真剣であるかを把握できる、劣化状況のチェックです。

まず塗装は高く評価できます。タウンゼントのブラックラッカーと同じく、しっかりと厚塗りされています。手に取った時の感触が、ATXとは明確に異なります。

ATXは金属であると実感させられるけれども、アポジーは金属軸だとは気づかない程です。もしかすると塗装の厚さは、タウンゼント以上かもしれません。

だから10年以上使い込まれても、傷だらけのプラスチック樹脂のような感じになっている程度で、特に問題は無いです。メッキ部分も同様です。

クラシックセンチュリーではメッキ部分がやられていた軸も数本ありましたが、数十年も使い続けられたことが原因でしょう。10年ちょっと程度ならば、余裕で大丈夫です。

むしろ問題だったのは、回転機構です。永久保証で修理依頼する程ではありませんが、相当へたっています。普通に使用する分には、実用的な問題はありません。しかしクロス独自の “捻る楽しさ” もありません。

おまけに後で画像紹介するように、回転機構はアポジー独特です。本体部分は共通なのですが、センチュリーやATXの回転機構とはプラスチック部分が異なります。

つまりクラシックセンチュリーでやったような、他のボールペンの回転機構を移植するということは出来ません。いや正確にいうとタウンゼントとは先端プラスチック部分は共通なので、タウンゼントを犠牲にすれば… 何とかなります。(もちろん何とかしたくはないですけど)

それから私がモンブランのマイスターシュテュックでやらかしたように、一点集中した打撃で傷ついている箇所がありました。さすがにその部分は、塗装が剥げ落ちていました。

ただし塗装が削れていたのは打撃部分のみです。そこを錆びないように塗装したので、数年は気にせずに使い続けることが出来そうです。

替芯の悩み

さて少し厳しい表現をしてしまったアポジーですが、デザインは悪くありません。また使い勝手も、「長時間の酷使」には耐えられず「快適でもない」という程度です。

そこでいつものようにペン先の穴を拡張して、三菱ジェットストリームを使えるようにしてしまいました。つまり世間でも高評価の低粘度インクが利用可能となり、替芯代を節約することが出来ます。

https://www.note1005.com/?p=653

ともかく三菱ジェットストリームを使いたい一心で、地道にヤスリで軸穴を拡張します。

それにしてもクラシックセンチュリーやアベンチュラの時には苦労しましたが、今回も同じように苦労しました。30分くらいは、ひたすらクルクルとヤスリを回転させました。

ATXやタウンゼントは大して苦労しなかったし、モンブランのマイスターシュテュックに至っては「瞬殺」です。それだけ替芯(リフィル)が安定するように、隙間が生じないような設計をしているということでしょうか。

ちなみに回転機構は、下記画像のようになっていました。回転機構に付属している黒いプラスチック部分を除けば、タウンゼントと共通でした。

ちなみに回転機構は、「エイヤっ!」と力技で押し込んだらあ、アッサリと本体軸から外れました。

なお今回のアポジーは、クロスのF(Fine)芯が装着されていました。現在はそのF芯を使わせて頂いていますが、最近のクロスの替芯の進化には驚かされました。

ちなみに替芯に拘りがなければ、三菱鉛筆SK-8をクロス純正芯の代わりに使うことも可能です。

15年くらい前は、書き心地は快適だけれども「ダマ」が生じて鬱陶しかったです。それが完璧に無くなっているのだから、米国のインク技術も進歩していると言えそうです。

(でも私は、今のところ三菱ジェットストリームの0.38mmが気に入っています。それが一番、どんな紙へも適応能力が高いので)

まとめ

日常使いして10年が経過したクロスのアポジー油性ボールペンを譲られましたが、まだまだ十分に現役で通用します。

購入時の新品同様な感じは無いですけど、くたびれて “歴戦の勇士” といった雰囲気も悪くないです。「傷は男の勲章さっ」と言ったところでしょうか。

それにしても、人の趣味は様々です。

たしかに造りは確かだし、アウロラやカランダッシュよりもモンブラン/ファーバーカステルに近い精巧さですが、3本も使い続けている人がいるとは驚かされました。

体格、指先、手の動かし方、書く時の角度などは人さまざまで、それに応じて “最適解” が存在するというところでしょうか。

あとは「住めば都」という部分もあるかもしれません。

いずれにせよ、楽しく仕事に取り組めるのが一番です。歴戦のベテラン、機会があったらば是非使って行きたいです。

それでは今回は、この辺で。

ではまた。